可笑しなことの見つけ方

日常で見つけた可笑しなことを書いていきます。毎週木曜日20時ごろ更新予定です。

渋谷駅への階段

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一帯が工事中の渋谷駅前でふと見上げると、見慣れない回廊が高いところに出来ていた。突然現れたこれは一体なんだろうかと気になって、わざわざ正面にぐるりと回ってみると、そこには銀座線乗り場へと向かう暫定の階段が聳え立っていたのだった。そして、この階段を使ってくれでも、使うなでもなく、ただ壁にはこんな貼り紙があるのだ。

「77段あります。」

Kuala LumpurにはBatu Caveというヒンドウー寺院があり、切り立った山の麓に立ち、見上げると無数の階段がつづく。2月の例大祭には大勢の人がこのてっぺんを目指す。ここを訪れた人はその無数の階段を息を切らしながら登ってお参りする。そうすることでご利益があるのだろうか。

昼食でBatu Caveの話になり、現地の会社で働いていた同僚が言う。
「私はあれは絶対無理」
もちろん彼女はムスリムなので、観光することはあっても、お参りすることも、その必要もない。

昼食の後、私たちは地下鉄の駅へと向かった。地下深くのホームまでつづく長いエスカレータを挟むようにして階段がある。ひどく急な傾斜で登り降りが大変だ。「誰も使わないね」と話していると、そこへ電車が到着した。ドアが開くと、電車から飛び出してきたインド系の子供たちが元気よく駆け上がってきた。僕は言った。
「Batu Caveの練習なんだ。」
彼女たちは手を叩いて大笑いした。

銀座線乗り場へつづく77段を登る気力は湧かない。もしここを勢いよく駆け上がったとして、それは何の練習なのだろうか。

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