可笑しなことの見つけ方

日常で見つけた可笑しなことを書いていきます。毎週木曜日20時ごろ更新予定です。

お寿司が含まれている

クアラルンプール国際空港の出入国審査官はパスポートに記された私の名前を読み上げ、顔をじっと見た。そして、何かを思い出したように、
「From JAPAN? 寿司はやっぱりよく食べるのか?」
と言った。私は突然の質問に驚きながら、「時々ね」と返した。それから何ごともなかったように私はパスポートを受け取ると、ゲートへと急いだ。

日本食といえば寿司、マレーシアでもやはり寿司が人気だ。マレーシア風の寿司だ。確かに寿司チェーンは地元の人たちでかなり混み合っている。だから、マレーシアに来た当初、日本人だと気付くと、挨拶もそこそこに彼らが寿司の話をすることにそれほど違和感を覚えることはなかったのだった。ところが、どうも日本人の全員がこのように寿司の話を現地の人からされているわけではないようだった。いったいなぜ私だけが寿司の話を投げかけられるのか。

ある日、同じラボで働いているインドネシア人と話していた時のことだ。
「あなたの名前は、寿司に似てるね」
と雑談の折、彼が言ったのだった。私の名前は「Atsushi」である。そんなことをこれまで言われたことは一度もなかったが、言われてみると確かに名前の中に「Sushi」が含まれていたのだった。

それ以来、私は私の名前が呼ばれる度に、気を付けて観察していた。多くの人が私の名前を発音しにくそうにしており、「Atsu」「Sushi」というふうに二つの単語を組み合わせるように発音していることがわかった。大学の先生は私の名前を呼ぶ時に、名前を思い出そうとし、そして小さく一度「Sushi」と言ってから、「Atsushi!」と言っていることに気づいた。

先日、スタバでコーヒーを注文しようとしたところ、おとなしそうなマレー系の新人の男性店員さんが、カップに書くために私の名前を尋ねてきた。もっと簡単に縮めた名前を言えばよかったのかもしれないが、そのまま「Atsushi」と言った。彼はどういうスペルなのかわからなかった様子で困っていると、横で指導していたベテランの女性店員さんが
「”A” “T”、それから”Sushi”って書けばいいのよ!」
と言った。そうか、彼らには私の名前の中にはっきりとお寿司が見えているのだと気付かされたのだった。